基幹システムとは?業務システム・ERPとの違いと自社での見極め方
社内で基幹システムの見直しや開発の話が持ち上がり、情報収集を任された方もいるのではないでしょうか。
ところが、自社のどのシステムやExcelが「基幹」にあたるのか、業務システムやERP(基幹業務を1つにまとめた製品)と何が違うのかは、曖昧なままになりがちです。
この記事で整理するのは、基幹システムの意味と種類、ほかのシステムとの違い、業種による中身の違いです。そのうえで、自社の基幹の範囲の見極め方、パッケージ・クラウド・独自開発の選び方、刷新が必要になるサイン、導入で失敗しない進め方まで解説します。
記事を運営するEPICsは、250件以上の開発実績を持つ、アプリ・業務システムの受託開発会社です。業務システムでは現場の業務診断から始め、作らない選択肢も含めて提案し、段階的に開発・導入を進めています。
出典:EPICs アプリ・システム受託開発サービス
EPICs DX・業務システム開発支援
石森裕也(EPICs株式会社 CTO)
サイバーエージェントのグループ会社での経験を経てEPICsに参画。開発経験10年。専門は、新規事業のアプリ開発(MVP開発を含む)と、業務システムの開発・刷新。ノーコード・AI駆動開発・スクラッチのすべてで開発経験を持つ。EPICsでは100件以上の新規事業・業務システム開発に携わり、主要プロジェクトで技術責任者を務める。
中原啓(EPICs株式会社 エンジニア)
NTTデータビジネスシステムズでWebアプリケーション開発に従事した後、EPICsに参画。専門は、新規事業のアプリ開発と、業務システムの開発・刷新。PMとして、EPICsの新規事業・業務システム開発の主要プロジェクトで開発工程の全体を管理する。ノーコードとAI駆動開発の両方で開発経験を持つ。
1.基幹システムとは、止まると受注・請求・給与などの業務が止まる中核のシステムの総称です。
2.自社の基幹の範囲は、システムの名前ではなく、止まると困る業務の流れを書き出して決めます。
3.業務を製品に合わせられるなら既製品、独自のやり方が強みなら独自開発が向いています。
基幹システムとは?止まると事業が止まる業務を支えるシステム
基幹システムとは、受注・在庫・会計・給与など会社の中核の業務を支え、止まると業務そのものが止まるシステムの総称です。「基幹」は、物事のおおもと・中心を表す言葉。
企業の情報システム部門などでつくる日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の研究資料でも、会社の事業の根っこにあたる業務を受け持ち、停止すれば影響が広い範囲に及んで企業活動に大きな支障が出るシステムと位置づけられています。(出典:日本情報システム・ユーザー協会「基幹系システムへのアジャイル活用の研究」(2023年4月))
基幹系システム・基幹業務システムも同じ意味で使われる
「基幹系システム」や「基幹業務システム」も、基幹システムとほぼ同じ意味で使われる呼び名です。
IT用語辞典のe-Wordsは、「基幹系システム(基幹業務システム)」と2つの呼び名を並べて説明。(出典:IT用語辞典 e-Words「基幹系システム」)
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の研究資料も、「基幹系システム」という呼び名を使っています。(出典:日本情報システム・ユーザー協会「基幹系システムへのアジャイル活用の研究」(2023年4月))
このほか「業務基幹システム」「社内基幹システム」と呼ぶ製品や会社もありますが、呼び方が違うだけで、指している範囲は同じと考えて差し支えありません。社内の会話で呼び名が混ざっていても、同じものの話として進めて大丈夫です。
止まると売上や請求が止まるかが、基幹を見分ける目安
基幹かどうかは、止まったときに受注・出荷・請求・給与の支払いといったお金と取引の流れまで止まるかで見分けられます。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の研究資料が基幹系システムの特徴として挙げているのも、停止すると影響が広い範囲に及び、企業活動に大きな支障が出るという点です。(出典:日本情報システム・ユーザー協会「基幹系システムへのアジャイル活用の研究」(2023年4月))
たとえば、受注を受け付けるシステムが止まると、注文を受けられないだけでなく、その後の出荷も請求もできなくなります。一方、社内チャットが止まっても、電話やメールで代わりに連絡すれば仕事は止まりません。
止まったときの影響がこれだけ違うため、基幹システムには、止まらないことと、データが正しいことが求められます。
Excelや紙で回していても、業務としては基幹にあたる
基幹システムは製品の名前ではなく役割の呼び名なので、受注や在庫をExcelや紙で管理している会社では、そのExcelや紙が基幹の役割を担っています。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の研究資料の定義も、会社の事業の根幹となる業務を担うかどうかが基準。(出典:日本情報システム・ユーザー協会「基幹系システムへのアジャイル活用の研究」(2023年4月))
そのため、「うちには基幹システムがない」と考えている会社にも、見直しの対象になる業務はあります。担当者しか中身が分からないExcelの受注台帳や、手作業で書き写している紙の在庫表が、その代表です。
自社のどこが基幹にあたるかの確かめ方は、後の章「自社のどの業務が基幹にあたる?見直す範囲の決め方」で紹介します。
基幹システムにはどんな種類がある?業務ごとの代表例
基幹システムの代表例は、販売管理・購買管理・在庫管理・会計・人事給与の5つで、業種によってはさらに中核の業務が加わる形が一般的です。
IT用語辞典のe-Wordsも、これらを代表例に挙げています。(出典:IT用語辞典 e-Words「基幹系システム」)
情報処理推進機構(IPA)のITパスポート試験の出題範囲(シラバス)でも、会計や販売管理は業務別のソフトウェアパッケージ(業務ごとの既製のソフト)の例。(出典:情報処理推進機構「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.2」)
生産管理など、業種によって加わるものは、後の章「業種によって基幹システムの中身はどう変わる?」で説明します。
| 種類 | 担う業務 | 止まると起きること |
|---|---|---|
| 販売管理 | 受注 出荷 請求・入金 | 注文を受けられず、出荷も請求もできない |
| 購買管理 | 発注 仕入 支払い | 材料や商品が届かず、仕入先への支払いが遅れる |
| 在庫管理 | 入出庫 棚卸 | 在庫の数が分からず、出荷や発注の判断ができない |
| 会計 | 財務会計(帳簿・決算) 管理会計(社内向けの数字の管理) | 帳簿がまとまらず、決算や経営の数字の確認が遅れる |
| 人事給与 | 従業員の情報 給与計算(勤怠を含めて扱うことが多い) | 給与が計算できず、支払いが遅れる |
| 生産管理(製造業) | 生産計画 資材の手配 工程・原価の管理 | 生産計画が立たず、製造の段取りが止まる |
販売・購買・在庫管理は、お金と取引の流れを支える
販売・購買・在庫管理は、受注から請求、発注から支払いまでのデータを互いに受け渡し、会社のお金と取引の流れを支えています。販売管理は受注から出荷、請求、入金までを、購買管理は発注から仕入、支払いまでを受け持つ仕組みです。その2つをつなぐのが在庫管理。
たとえば、注文を受けたら在庫の数を確かめて出荷し、在庫が減れば発注して仕入れ、入荷した分を在庫に足します。
在庫の数が販売と購買の両方に関わるため、3つのデータがつながっていないと、あるはずの商品がなかったり、同じものを二重に発注したりといった食い違いが起きかねません。
そのため、3つを一元管理(1か所でまとめて管理すること)するか、互いに連携させることが大切になります。

会計・人事給与・勤怠は、会社全体の管理を支える
会計・人事給与・勤怠は、業種を問わずどの会社にもある基幹業務で、お金と人の管理を通じて会社全体を支えています。会計の役割は、販売や購買で発生した売上・仕入のデータを受けて、帳簿や決算をまとめること。
人事給与・勤怠は、従業員の勤務時間を記録し、それをもとに給与を計算して支払うまでを管理します。
販売や購買のデータが会計につながっていると、売上や利益といった経営の数字が早く見えるようになるのが利点です。数字が早く見えれば、仕入を増やすか、人員を見直すかといった経営判断にも使えます。
業務システム・ERP・情報系システムとの違いは?
基幹システムとほかのシステムの違いは、「止まると事業が止まるか」と「1つの製品にまとまっているか」の2点で整理できます。
業務システムは基幹システムを含む広い呼び名、情報系システムは止まっても業務は続けられるもの、ERPは基幹システムを1つの製品にまとめたもの。名前の似た基盤システムも含めて、違いを表にまとめました。
| 呼び名 | 指す範囲 | 止まったときの影響 | 例 |
|---|---|---|---|
| 基幹システム | 受注・仕入・在庫・会計・給与など、事業の中核の業務 | 取引やお金の流れが止まる | 販売管理 在庫管理 会計 |
| 業務システム | 業務に使うシステム全体(基幹システムを含む) | システムによって異なる | 基幹システム 部署ごとのシステム |
| 情報系システム | 連絡や情報共有など、業務の効率化を助けるもの | 効率は落ちるが、取引は続けられる | メール グループウェア スケジュール管理 |
| ERP | 基幹業務を共通のデータベースで1つにまとめたパッケージ製品 | 基幹システムと同じく、取引やお金の流れが止まる | 販売から会計までをまとめた製品 |
| 基盤システム | システムを動かすための土台 | その上で動くシステムに影響が及ぶ | サーバー ネットワーク ログインの仕組み |

業務システムは、基幹システムを含む広い呼び名
業務システムは業務に使うシステム全体を指す広い呼び名で、基幹システムはその中でも事業の中核を担う一部です。
部署ごとに導入されるシステムも、業務に使うものとして業務システムに含まれます。IT用語辞典のe-Wordsでは、こうしたシステムを部門別システムと呼び、基幹系と対比。(出典:IT用語辞典 e-Words「基幹系システム」)
ただし、基幹システムと同じ意味で「業務システム」と呼ぶ会社もあるため、社内で話すときは「止まると取引が止まるものか」で区別すると、話がかみ合いやすくなります。
情報系システムは、止まっても業務そのものは続けられる
メールやグループウェア(社内の予定や連絡、資料をまとめて共有する仕組み)などの情報系システムは、業務の連絡や効率化を助けるもので、止まっても取引そのものは続けられる点が基幹システムと違います。
IT用語辞典のe-Wordsが情報系システムの例に挙げるのは、電子メールやグループウェア、スケジュール管理など。業務を進めるうえで欠かせないわけではないものの、効率化に役立つシステムと位置づけられています。(出典:IT用語辞典 e-Words「基幹系システム」)
なお、顧客管理(CRM:顧客の情報や商談の記録を管理する仕組み)のように、会社の業務によって基幹と情報系のどちらに入るかが変わるものもあるので、自社でどう使っているかで判断するとよいでしょう。
ERPは、基幹システムを1つの製品にまとめたもの
ERPは、販売・購買・在庫・会計・人事といった基幹業務を、共通のデータベース(データをまとめて保管する仕組み)で1つにまとめたパッケージ製品です。
もとは会社の資金や人材、設備などの経営資源をまとめて管理する考え方を指す言葉で、日本語では「統合基幹業務システム」とも呼ばれます。(出典:IT用語辞典 e-Words「ERP」)
情報処理推進機構(IPA)のITパスポート試験のシラバスにも「ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)パッケージ」として載っている、基本的な用語です。(出典:情報処理推進機構「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.2」)
よく名前の挙がるSAP社の製品も、こうしたERP製品の一例。
IT用語辞典のe-Wordsによると、ERPは個別に開発するのではなく、ソフトウェア会社が開発・販売するERPパッケージを導入して実現するのが一般的です。(出典:IT用語辞典 e-Words「ERP」)
基幹システムは業務ごとに別々のシステムでも成り立ちますが、ERPは最初から各業務のデータがつながっている点が大きな違い。
製品を入れる場合は業務の手順を製品に合わせることが前提になるため、どう用意するかは後の章「基幹システムはどう用意する?パッケージ・クラウド・独自開発の選び方」であわせて説明します。
基盤システムは、基幹システムを動かす土台
基盤システムは、サーバーやネットワーク、ログインの仕組みなど、基幹システムを含むさまざまなシステムを動かすための土台を指します。
名前が似ていて混同されやすいものの、業務の中身ではなく、システムを動かすための仕組みのことです。
ただし、IT用語辞典のe-Wordsは、基幹系システムの意味の1つとして、全社で共通して使う、組織の基盤の一部になるシステムも挙げており、言葉の使い方が重なる場合もあります。(出典:IT用語辞典 e-Words「基幹系システム」)
業種によって基幹システムの中身はどう変わる?
基幹システムの中身は、会計や人事給与といった共通の業務に、業種ごとの中核業務が加わることで変わります。
IT用語辞典のe-Wordsによれば、製造業では生産管理、流通業や運輸業では配送管理が加わるのが一般的。(出典:IT用語辞典 e-Words「基幹系システム」)
ここでは、代表的な4つの業種を取り上げます。
- 製造業
- 卸売・小売・EC
- 運送業
- 介護などのサービス業
製造業は、生産管理と原価の把握が中心になる
製造業では、生産計画から資材の手配、工程の進み具合、原価までを管理する生産管理が、基幹システムの中心になります。受注した製品をいつ作るかという生産計画は、販売(受注)・購買(資材の発注)・在庫(部品や製品の数)のデータとつながっていなければ立てられません。
製品ごとにかかった材料や手間をつかむ原価の管理も、値付けや利益の判断に欠かせない部分です。
また、注文を受けてから作る受注生産か、売れ行きを見込んで先に作る見込み生産かによって、必要な機能が変わるのも製造業の特徴です。
そのため既製の製品に業務を合わせにくい場合があり、どう用意するかは後の章「基幹システムはどう用意する?パッケージ・クラウド・独自開発の選び方」で選び方とあわせて説明します。
製造業で使うシステムの種類や、パッケージか開発かの判断の基準は、製造業のシステムの種類と選び方で詳しく取り上げました。
卸売・小売・ECは、受注から出荷までをつなぐことが中心
卸売・小売・ECでは、受注から在庫の引き当て(注文に対して在庫を確保すること)、出荷、請求までをつなぐ販売管理と在庫管理が、基幹システムの中心になります。
ECや通販で、自社サイトと複数の販売サイトの両方で売っている場合は、販売経路ごとに入る注文と、共通の在庫をまとめて管理しなければなりません。在庫の数がずれると、売り切れた商品の注文を受けてしまうおそれがあるためです。
運送業は、配送と車両の管理が基幹に加わる
運送業など物流の会社では、配送管理が基幹システムに加わります。(出典:IT用語辞典 e-Words「基幹系システム」)
配送管理とは、配送の計画や車両・運転者の手配、運賃の請求などを管理する仕組み。
車両の点検や整備の記録のように、業界の決まりに沿った管理が求められる業務があることも、運送業ならではの点です。
介護などのサービス業は、予約・人の手配・勤怠が基幹になる
訪問入浴などの介護サービスでは、利用者の予約や1日の訪問ルート(コース)、職員と車両の手配、勤怠が、売上と給与に直結する基幹業務になります。業種ならではのルールが多く、一般的な製品では対応しきれないこともある業種です。
訪問入浴サービスを行う株式会社ワカシ様は、業務の多くをExcelで管理しており、データがつながっていないために入力の手間が大きくなっていました。
そこで、予約や実績、勤怠から介護保険の請求までを一つの流れで管理する仕組みを目指したといいます。
ところが、利用者1人に職員3人を配置するための勤怠管理や、使う車両、訪問コースといった訪問入浴ならではのルールには、他のサービスでは融通が利かなかったそうです。
インタビューでは「パッケージ型のツールだと、制約も大きく、やりたいことができないものが多かったんです。」と振り返っています。(出典:お客様インタビュー:株式会社ワカシ様)
当社が開発したのは、予約・訪問コース・職員と車両の手配・勤怠といった、基幹にあたる業務をまとめた業務システムです。
利用者・事務所・車両・コース・予約枠の管理と、勤怠の自動集計を備え、介護系システム「トリケアトプス」とはAPI(システム同士でデータをやりとりする仕組み)でつないでデータを受け渡しています。(出典:開発事例:訪問入浴サービスの予約管理・勤怠管理システム)
業種によって基幹の中身が変わり、既製品だけでは合わない部分が出ることを示す例といえるでしょう。
自社のどの業務が基幹にあたる?見直す範囲の決め方
自社のどの業務が基幹にあたるかは、今あるシステムの名前からではなく、止まると困る業務の流れ(業務フロー)をたどることで見えてきます。
ここで紹介するのは、製品やシステムの紹介ではなく、担当者が自分で進められる次の3つの作業。書き出した結果は、社長に見直しの範囲を説明するときの資料にも使えます。
- 止まると困る業務の流れを書き出す
- 二重入力や転記をしている箇所に印をつける
- 担当者しか触れないExcelや古いシステムも書き出す
EPICs株式会社CTO 石森裕也からのコメント
当社の業務診断では、要件を聞き取るだけで終わらせず、現場の方の実際の業務の進め方を確かめながら基幹の範囲を洗い出します。運用を始めた後に起きそうな課題や仕様の抜け漏れも、作る前の段階で確認。こうして範囲を見ていくと、SaaSで足りる業務や、今のシステムの一部を直せば済む業務が見つかることもあり、その場合は新しく作らない方法をご提案しています。範囲を決めることは、作るものを減らすことにもつながるのです。
まず、止まると困る業務の流れを書き出す
まずは受注から入金、発注から支払い、勤怠から給与までの流れを書き出し、各工程で何を使っているかを並べてみます。使っているものは、システムだけでなくExcelや紙も書くのがポイントです。
システムの名前から書き始めると、Excelや紙で回している工程が抜け落ちてしまいます。
| 業務の流れ(記入例) | 今使っているもの | 止まったら困ること | 担当者 |
|---|---|---|---|
| 受注 | 販売管理システム | 出荷と請求ができない | 営業事務 |
| 在庫の確認 | Excelの在庫表 | 出荷できるか判断できない | 倉庫担当 |
| 請求 | 販売管理システム 会計ソフトへ手で転記 | 入金の確認と帳簿づけが遅れる | 経理 |
| 勤怠の集計 | 紙のタイムカード | 給与が計算できない | 総務 |
書き出した工程のうち、「止まると翌日の出荷や請求ができない」工程が、基幹の範囲にあたります。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の研究資料が示す、停止すると企業活動に大きな支障が出るかどうかという考え方を、そのまま判断の軸に使えるわけです。(出典:日本情報システム・ユーザー協会「基幹系システムへのアジャイル活用の研究」(2023年4月))
二重入力や転記をしている箇所に印をつける
書き出した流れの中で、同じ内容を2回入力している箇所や、Excelから別のシステムへ転記している箇所に印をつけます。そこはシステム同士がつながっていない「つなぎ目」で、入力ミスや手間が集中しやすい部分です。
ERPについても、IT用語辞典のe-Wordsは、全社で導入すると部門の間ですぐに情報を共有し、密に連携できるようになると説明しています。(出典:IT用語辞典 e-Words「ERP」)
つまり見直しでは、このつなぎ目を「1つの製品にまとめるか」「システム同士を連携させるか」が論点になるということ。どちらを選ぶかは、次の章の「どう用意するか」とあわせて考えます。
担当者しか触れないExcelや古いシステムも書き出す
特定の担当者しか中身が分からない(属人化した)Excelのマクロ(作業を自動で行う仕組み)や、作った会社と連絡が取れない古いシステムは、範囲から漏れやすいため、忘れずに書き出します。普段は問題なく動いているため見落とされがちでも、基幹の業務を担っている場合があるからです。
書き出すときは、何が入っていて、誰が直せるのかまで添えておくのがコツ。そうしておくと、見直しの範囲に入れるべきものがはっきりします。
業務システムの開発・見直し、まずは無料でご相談ください
EPICsは250件以上の開発実績をもとに、現場の課題整理から業務システムの開発・導入・定着まで一気通貫で支援します。どの業務からシステム化すべきか、という段階からご相談いただけます。
基幹システムはどう用意する?パッケージ・クラウド・独自開発の選び方
基幹システムを用意する方法は、パッケージやクラウドサービスを使う方法、独自に開発する方法、その2つを組み合わせる方法の3つに分けられます。
情報処理推進機構(IPA)のITパスポート試験のシラバスが挙げるシステム化の方法も、ソフトウェアパッケージの導入、個別の開発、他社のサービスの活用など。(出典:情報処理推進機構「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.2」)それぞれの向き・不向きは次のとおりです。
| 用意の方法 | 向いている会社 | 気をつけること |
|---|---|---|
| パッケージ(ERPを含む) | 一般的な業務の流れで回せる会社 | 業務の手順を製品に合わせる必要がある |
| クラウドサービス(SaaS:インターネット経由で使う既製のソフト) | 機器の管理を任せたい会社 早く使い始めたい会社 | 独自の手順に合わせた変更には限りがある |
| 独自開発(スクラッチ:一から作る方法) | 独自のやり方が強みになっている会社 | 作るものの中身を決める手間と開発期間がかかる 公開後の保守を誰が担うかを決めておく |
| 既製品+一部を独自開発 | 基幹の多くは一般的だが、一部に独自の業務がある会社 | 連携の数が増えるほど、つなぎ目の保守が必要になる |

業務を製品に合わせられるなら、パッケージやクラウドが向く
受注や会計を一般的な流れで回せる会社なら、パッケージやクラウドサービスを使うことで、すでにある仕組みを使い始められます。一から作る必要がないため、導入までの手間を抑えやすい方法です。
中小企業向けには、業務システムをインターネット経由で使えるクラウド型のサービスも登場しています。(出典:IT用語辞典 e-Words「ERP」)
ただし、IT用語辞典のe-Wordsによると、ERPの導入では原則として、現場の業務手順を製品側に合わせて標準化。部門ごとの都合に合わせたカスタマイズ(製品の作り替え)をしすぎると、導入の利点が薄れるとされています。(出典:IT用語辞典 e-Words「ERP」)
選ぶ際に確かめたいのは、自社の独自の手順を製品に合わせて変えられるか、そして現場がその変化を受け入れられるかの2点です。
独自の業務が強みなら、独自開発(スクラッチ)が向く
見積もりの出し方や工程の管理など、他社と違うやり方そのものが強みになっている業務は、製品に合わせると強みを失うため、独自開発が向いています。
独自開発のうち、既存のシステムやテンプレートを土台にせず一から作る方法が、スクラッチ開発です。(出典:IT用語辞典 e-Words「スクラッチ開発」)自社の業務に合わせて作れる一方で、作るものの中身を決める手間と、開発の期間がかかる点には注意しなければなりません。
独自開発でもう1つ大切なのが、公開後の保守を誰が担うか。作った会社に保守を頼り切りにならないよう、設計書などの資料を受け取れるか、プログラムやデータを自社で扱えるかを、契約の段階で確かめておきましょう。
基幹は既製品にして、独自の業務だけ作る組み合わせもある
会計や給与のように一般的なルールで決まる業務は既製品を使い、自社ならではの業務だけを独自に作って連携させる方法もあります。
IT用語辞典のe-Wordsにある、ERPに追加の機能(アドオン)を個別に開発する方法も、この組み合わせの一種です。(出典:IT用語辞典 e-Words「ERP」)
前の章で紹介した株式会社ワカシ様の事例も、介護系システムとAPIでつなぎながら、予約・コース・勤怠といった訪問入浴ならではの部分を独自に作った例にあたります。(出典:開発事例:訪問入浴サービスの予約管理・勤怠管理システム)
ただし、連携の数が増えるほど、システム同士のつなぎ目の保守が必要になる点は覚えておきたいところです。
クラウドとオンプレミスは、保守を誰が担うかで選ぶ
クラウドとオンプレミスの違いは、システムを動かす機器の管理や更新を、外部の事業者に任せるか、自社で担うかにあります。
IT用語辞典のe-Wordsによると、オンプレミスは自社の建物の中に機器を置いてシステムを運用する形、クラウドは外部の事業者が用意した設備を通信回線を通じて使う形。(出典:IT用語辞典 e-Words「オンプレミス」)
オンプレミスは自社の都合で管理できる半面、機器の用意や更新も自社で行わなければなりません。システムの担当者がいない中小企業では、機器の管理を事業者に任せられるかどうかが、判断の分かれ目になるでしょう。
反対に、社内に機器の管理を担える人がいて、更新の時期を自社で決めたい場合は、オンプレミスも選択肢に残ります。
なぜ基幹システムの刷新が必要になる?見直しのサイン
基幹システムの刷新(リプレイス)とは、今使っている基幹システムを新しいシステムに置き換えることです。
直せる人がいない、業務に合わない、法改正への対応が重い、中身が分からない、のどれかが見えたときが、見直しを始める時期といえます。4つのサインと、よくある例は次のとおりです。
| サイン | よくある例 |
|---|---|
| 直せる人がいない | ・製品のサポートが終わる ・作った会社や社内の担当者がいなくなった ・オフコン(古い事務処理用の専用コンピューター)を使い続けている |
| Excelでの補完が増えた | ・新しい商品や取引の形に対応できず、システムの外のExcelで管理する業務が増えている |
| 法改正への対応が重い | ・インボイス制度や電子帳簿保存法に合わせた請求書の発行・保存を、手作業で補っている |
| 中身が分からない | ・長く改修を重ね、どこを直すと何に影響するかを分かる人がいない |
直せる人がいなくなると、障害が起きたときや業務を少し変えたいときに対応できず、業務が止まるおそれがあります。新しい商品や取引に合わせられずExcelで補っている状態も、システムが今の業務に合わなくなっている合図です。
法改正への対応も、見直しのきっかけになります。
例として、令和5年(2023年)10月1日に始まったインボイス制度では、一定の事項を記載した帳簿と適格請求書(インボイス)などの保存が、仕入税額控除(仕入れにかかった消費税を、納める税額から差し引くこと)の要件になりました。(出典:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」)
また電子帳簿保存法のもとでは、請求書などをPDFなどのデータで受け取った場合、そのデータもルールに沿って保存する必要があります。(出典:国税庁「電子帳簿保存」)
今のシステムがこうした変化に対応できず、手作業で補う範囲が広がっているなら、見直しを考える時期です。
長く改修を重ねるうちに中身が分かる人がいなくなり、変えたくても変えられない状態も、刷新が必要なサインの1つ。
デジタル庁のニュースは、2018年のDXレポートにある定義を紹介しています。技術の古さ、システムの肥大化・複雑化、中身が見えなくなること(ブラックボックス化)などによって、経営の足かせや高コストの原因になっているシステムが、レガシーシステムです。(出典:デジタル庁ニュース「企業のDXを阻む『レガシーシステム』とは?」)
古いシステムを今の技術で作り替える考え方や、手法の選び方は、「モダナイゼーションとは」で解説しています。
サインが1つでも当てはまるなら、止まってから慌てて移行先を探すことにならないよう、早めに見直しを始めるのが安心です。
置き換えの具体的な進め方は、システム リプレイスの進め方と依頼先の選び方で解説しています。
業務システムの開発・見直し、まずは無料でご相談ください
EPICsは250件以上の開発実績をもとに、現場の課題整理から業務システムの開発・導入・定着まで一気通貫で支援します。どの業務からシステム化すべきか、という段階からご相談いただけます。
基幹システムの導入で失敗しない進め方
基幹システムの導入で失敗を避けるには、目的と範囲を先に決め、一度に全業務を切り替えずに、段階ごとに確かめながら進めます。ここで主に想定するのは、Excelや紙で回している業務を初めてシステム化する場合。
要件定義から運用・保守までの開発の工程そのものは、システム開発の流れと発注者がやることで詳しく解説しました。
ここでは、どの依頼先に頼む場合にも通じる、次の4つの注意点を紹介します。
- 目的と範囲を決めてから、製品や依頼先を選ぶ
- 一度に全業務を切り替えず、一部の業務から始める
- 費用と期間は、画面数・利用人数・連携の数で変わる
- 導入後も、現場が使い続けているかを確かめる
EPICs株式会社CTO 石森裕也からのコメント
当社では、着手する前に、業務改善をいくつかの段階に分けたロードマップ(進め方の計画)を共有してから進めています。一部の業務で試した結果を見て「拡げる・作り直す・止める」を段階ごとに判断できるため、総額を最初に一度に負担していただく必要はありません。一方で、基幹に関わる重要な部分は、実績のある手法で堅く作ることを最初に決めておくのが当社のやり方です。試しながら進める部分と、最初から堅く作る部分を分けておくことが、失敗を避ける進め方だと考えています。
目的と範囲を決めてから、製品や依頼先を選ぶ
何を良くしたいかという目的と、どの業務まで変えるかという範囲を先に決めないと、製品や見積もりを比べることができません。
目的と範囲が決まれば、要件定義(作るものの中身を決める作業)や、提案依頼書(RFP:依頼先に提案を求めるための資料)も作りやすくなります。
依頼の準備から依頼先の選び方までの詳しい内容は、システム開発の依頼の準備と依頼先の選び方にまとめました。
あわせて決めておきたいのが、社内の担当者と、最終的に判断する決裁者。さらに、処理にかかる時間など、効果を何で測るかを最初に決めておくと、社長に導入の効果を説明しやすくなります。
一度に全業務を切り替えず、一部の業務から始める
すべての業務を同じ日に新しいシステムへ切り替えると、問題が起きたときに業務全体が止まるため、影響の小さい業務から始めます。基幹システムは止まると取引やお金の流れまで止まるので、切り替えの失敗はそのまま事業の損失につながりかねません。
たとえば、一部の業務や一部の拠点で先に使い始め、問題がないことを確かめてから対象を広げていく方法があります。問題が見つかっても影響はその範囲にとどまり、直してから次へ進めるのが利点です。
費用と期間は、画面数・利用人数・連携の数で変わる
基幹システムの費用と期間は、画面の数、使う人の数、ほかのシステムとの連携の数、移すデータの量で大きく変わります。当社が公開している費用の目安も、画面数と想定する利用人数でシステムの規模を分ける形です。(出典:EPICs DX・業務システム開発支援)
段階に分けて進めれば、総額を最初に一度で決める必要もありません。具体的な金額の目安は、この記事の最後の章で紹介します。
導入後も、現場が使い続けているかを確かめる
システムを入れても、現場が使いにくいと感じるとExcelや紙の運用に戻ってしまうため、導入後も使われ続けているかを確かめます。確かめたいのは、実際に使われているか、入力の手間が減ったかといった点です。
使われていない場合に備えて、操作の説明会やマニュアル、現場の声を集める仕組みを用意しておくと、定着しやすくなります。効果を数字で示せれば、経営への報告もしやすく、次の段階に進むかどうかの判断材料にもなるでしょう。
基幹システムの見直し・開発ならEPICs
EPICsは、基幹システムの見直しと構築を、どこまでを作るかの見極めから一緒に進め、開発、段階的な導入、現場への定着まで支援する会社です。
開発の手法は業務の領域ごとに使い分け、ノーコード(プログラムを書かずに作る方法)、AI駆動開発(AIを使って開発を進める方法)、一から作るスクラッチ開発を組み合わせます。
導入の効果を何で測るかは、当社では着手前にKPI(効果を測る指標)として決め、効果を測る仕組みをシステムに組み込んでいます。
導入の前と後を数字で比べられるため、社長への説明や、次の段階に進むかどうかの判断の材料になるのが利点。
操作の教育やマニュアルの整備、現場の声を集める仕組みづくりといった、現場への定着を支える支援もオプションの1つです。
作ったあとも長く使えるよう、10年使う前提で保守しやすい構成にし、業務の変化や法改正に合わせた追加開発も続けて支援します。
資料を整えたうえでプログラムとデータの所有権もお渡しし、将来ほかの会社へ移しやすい状態を保つのが当社の方針です。
独自開発の章で紹介した、保守を作った会社に頼り切りにしないための備えを、最初から組み込んでおくことにあたります。
費用の目安は、業務診断が30万円〜(本開発を依頼する場合は全額充当)、大規模・基幹システム(50画面〜・10,000人〜)で4ヶ月〜/300万円〜です。
これまでに250件以上の開発実績があり、業務システムでも現場の業務を理解するところから一緒に進めています。
まずは自社の業務の流れを書き出し、どこから手を付けるかを専門家と一緒に決めることから始めてみてください。
出典:EPICs DX・業務システム開発支援
EPICs アプリ・システム受託開発サービス
- なぜ基幹システムの刷新が必要になるのですか?
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今のままでは業務を支えきれなくなる限界が来るため、基幹システムの刷新が必要になります。限界のきっかけは主に4つです。1つ目は、製品のサポート終了や担当者の退職で、直せる人がいなくなること。2つ目は、業務に合わなくなり、Excelでの補完が増えること。3つ目は、インボイス制度などの法改正への対応が重くなることで、4つ目は、古いまま使い続けるうちに中身が分からなくなることです。基幹システムは止まると取引やお金の流れまで止まるため、止まってから移行先を探すと、期限に追われて十分に比べられません。サインが見えた時点で見直しを始めることが大切です。
- SAPは基幹システムですか?
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SAPは、基幹業務を1つにまとめたERP製品の一例で、基幹システムを実現する方法の1つです。ERPとは、販売・購買・在庫・会計・人事などの基幹業務を、共通のデータベースで1つにまとめたパッケージ製品のこと。一方、基幹システムは製品の名前ではなく、事業の中核の業務を担うシステムという役割の呼び名です。そのため、ERP製品を使っていても、業務ごとに別々のシステムを使っていても、受注台帳や在庫表をExcelで管理していても、基幹の業務を担っていれば基幹システムにあたります。
- 中小企業でも基幹システムは必要ですか?
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はい、会社の規模に関係なく、基幹にあたる業務はどの会社にもあります。受注から請求、勤怠から給与までの流れは中小企業にもあり、Excelや紙で回していれば、それが基幹の役割を担っている状態です。考えるべきなのは、基幹システムが要るかどうかではなく、その業務を専用のシステムにするかどうか。業務の手順を製品に合わせられるなら、パッケージやクラウドサービスで足りる場合もあります。独自のやり方が強みになっている業務があれば、その部分だけを独自に作る方法も考えられるでしょう。
- 基幹システムの導入には、どれくらいの期間と費用がかかりますか?
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基幹システムの導入にかかる期間と費用は、画面の数、使う人の数、ほかのシステムとの連携の数、移すデータの量によって変わります。当社の目安では、大規模・基幹システム(50画面〜・10,000人〜)で期間は4ヶ月〜、費用は300万円〜です。その前に行う業務診断は30万円〜で、本開発を依頼する場合は全額を充当します。また、一部の業務で試してから広げるなど段階に分けて進めれば、総額を一度に負担する必要はありません。まずは自社の業務の流れを書き出し、どこまでを対象にするかを決めることが、期間と費用を見積もる出発点になります。
業務システムの開発・見直し、まずは無料でご相談ください
EPICsは250件以上の開発実績をもとに、現場の課題整理から業務システムの開発・導入・定着まで一気通貫で支援します。どの業務からシステム化すべきか、という段階からご相談いただけます。
